夜、駅から家に向かう途中の道がひっそりとしていた。静かで、人がいなくて、自分が歩く音とどこかの家のファンとか自販機とか下水の流れる音とか、人がいないような音だけが立体に聞えてきた。色んなものが冷たく、孤独に感じる。もうそろそろ冬が来る。冬の夜は街から人が消えたように感じる。
去年の冬に伊豆半島に出かけたとき、日が沈んでからの半島はどこもかしこも廃墟のような孤独感が漂っていた。まだ夕方5時とか6時とかなのに、車で走っている感覚は夜中だった。このまま帰れなくなってもおかしくないと、そのときは本気で思った。